天下泰平、災厄退散の願い込め
「幸せの風が吹きますように」と五色の菓子を
大阪・千里山の一角、風情ある数寄屋造りの料亭『柏屋』。亭主・松尾英明さんの料理は、伝統を大切にしながら、創意工夫でモダンな趣と共に季節の物語をさえ感じさせます。「かさね」とは平安貴族が絹衣の色の重なりで、季節の彩りを表現した「かさねの色目」に想を得た『柏屋』謹製のひと口サイズのお菓子。「こうふう」は、陰陽五行思想で万物を構成する五つの元素を表す、日本の伝統文化に欠かせない五色に、天下泰平、災厄退散への願いがこめられています。「青」はヨモギ、「赤」は『染司よしおか』の紅花、イチゴとラズベリー、黄色はくちなしと黄菊、白は白インゲン豆、黒は竹炭で色と風味を創出。特に、「白」は塩味、「黒」は唐納豆の発酵由来の甘じょっぱい味わいがユニークで、ウイスキーなどのお酒にも寄り添います。蓋を開けた瞬間にハッと胸を突かれるほどの美しさで、食べれば各々異なる味わいで、ため息がもれる美味しさです。
先様にも幸福をお届けできる美しい贈り物。過去に弊誌でも、京都『染司よしおか』の吉岡幸雄(故人)さんと「かさね」の連載をしていました。「幸風(こうふう)」という名前にも、吉岡さんへの想いが込められています。